それは突然起こった

miwa3852006-10-15

午前中、久しぶりに惰眠をむさぼっていたところ、10時頃ウィリアムが起きてはしゃぎだした。その音を聞きつけて寝室からアルバートもやってきて、しばらく3人でゴロゴロ♪が、11時頃になってアルバートに「そろそろおきようよ」と言われてしまったので、アルバートに王子を起こしてもらっている間に私も起き出した。顔を洗ったり、子供たちの着替えを出したりしている間に王子がいつものように朝ごはん(もはや昼ごはん…)の準備をしてくれて、先に子供たちに食べさせ始めてくれた。この辺でなんとなーくお腹が痛いな〜なんて思いつつ、アルバートの食事を王子から引き継いで食べさせた。が、やっぱりなんだかお腹が痛い。とりあえずまた王子にアルバートに食べさせるのを代わってもらってトイレに行ってみた。でも何も出ない。でもお腹痛い。ソファに横になっていると王子が「救急車呼ぶ?」と聞いてくれた。救急車なんて今まで呼んだことないし、たいしたことなかったら恥ずかしいし…。私:「盲腸ってどっち側が痛かった?」王子:「右」。私が痛いのは左下腹部。これってもしかして卵巣嚢腫が茎捻転を起こしたのじゃなかろうか…。王子:「自分で車運転して病院行けるの?」私:「…いけない」これが決めてとなり、救急車を呼ぶことに。すぐに帰れることになるかもしれないのでまだパジャマ姿だった私はとりあえずお腹を抑えながらも自分の着替えセットを準備。王子は子供たちの食事を終わらせて後片付けをしてからいよいよ救急車を呼んだ。5分で来ちゃうんでしょ。ドキドキ。その頃には痛みはどんどんひどくなり、もう立ってなんかいられない。ベッドに横たわり、身もだえながら今か今かと耳をすませて救急車の到着を待った。ピーポーピーポーと待ち焦がれた音がどんどん大きくなってきて、マンションの前でぴたりと止んだ。それきた!と思って次はピンポンが鳴るのを待った。ところがまてどくらせどいっこうに鳴らない。迷っているのだろうか??ようやくピンポンが鳴ったのでベッドから起き出して廊下にへたりこんで待機。王子はなんやかんやと荷物を準備している。私の保険証の入ったお財布だけは持ってくれたことを確認。玄関のチャイムが鳴り、王子がドアを開けると3人の救急隊員が立っていた。布の担架に乗せられ上から毛布をかけられてエレベーターで移動。マンションの前に止まっていた救急車に運び込まれ、王子と二人の子供たちも乗り込んでさぁ出発!かと思いきや、搬入先の病院を探す作業が始まった。そうか、やみくもに走ったって仕方ないものね。痛みと格闘しながらも納得。救急隊員の一人が近場の救急病院に電話し、私の年齢、性別、症状を詳しく説明してしばし待つ。が、答えはノー!なに〜!!早くしてくれ〜、こっちは死にそうに痛いんだよぉ。でもその後3、4箇所に電話してみたがどこも受け入れられないとのこと。毎回最初から同じ説明を繰り返してはダメとの返事を聞いて絶望的になってきた頃、やっと港北の方の病院からOKが出て救急車が動き出した。30分ぐらいかかっただろうか。七転八倒の苦しみを見せていた私だったけど、意識はしっかりしていたし、死ぬか生きるかというほどではなかったのでよかったけど、これじゃ助かるものも助からないんじゃなかろうか。待っている間、王子が痛み止めはないか聞いてくれたけど救急車にはないとのこと。助けて〜。救急車が動き出す頃には少し痛みが和らいだのか、それとも私の意識が朦朧としてきたのか、どこをどう走っているのかもさっぱりわからない(寝転がっているのだから当たり前か)まま病院に到着。
まず血液検査とお腹の上からの超音波検査を受けたけど、それだけでは痛みの原因がはっきりとわからなかったようだ。髪はオールバックでひげを生やし、ちょっとギラギラしたとても医者には見えない救命医からは尿結石か卵巣嚢腫の茎捻転かと告げられる。だからきっと卵巣嚢腫の茎捻転だってば〜。いずれにしろ、どちらも痛み止めが効きにくいらしく、点滴による痛み止めも、座薬による痛み止めもちっとも効かない。もうこの頃には「痛い…痛い…」といい続け、ストレッチャーから落ちんばかりにあばれている私。出産のときは泣き叫ぶなんて恥ずかしいと、陣痛の痛みにも無言で堪えた私だったはずなのに。とにかく本当に痛いんです。苦しむ私の耳元で王子が冷静に「このままでは検査ができなくて処置もできないから、痛みの合間に検査をしなくちゃいつまでたっても痛いままだよ」。わかりましたよ、今ちょうど痛みがおさまったから今のうちね!まず尿検査のためにストレッチャーから車椅子に乗り換えてトイレへ。戻ってきて今度はCTスキャンとレントゲンを撮ることになった。看護士さんに「車椅子で行けますか?」と聞かれたので「このままがいいです」と言ったのに、なぜか車椅子登場。何を聞いているんじゃいと思いつつもおとなしくストレッチャーを降りて車椅子に乗り込んだ。でも座っていられないからなんとなく車椅子の上で寝転がった(どうやって??)。CTを撮り終わってレントゲンの順番を待つ間、痛みがぶり返してきたので車椅子を降りてベンチの上で横になって待った。またまた意識が遠のいてきたころ、順番が来たので現実に引き戻されてレントゲン撮影。もうこの頃には痛くて痛くてあばれまくっていたが、撮影の瞬間だけは我慢してじっとしていた。うまく撮れなくてやり直しなんてことになったら困るからね。元いた場所に戻されて今度は産婦人科医による超音波検査。私の画像を見ながらカーテン越しに最初に見てくれた救命医と産婦人科医で相談している。やっと診断がついたようだ。左の卵巣が腫れていて、茎捻転を起こしている可能性があるので腹腔鏡で見てみてねじれを治し、腫瘍を切除するとのこと。だからそうじゃないかといったでしょ〜。とにかく早く手術してくれ。
手術が決まるとなんだかわからないけどまたレントゲンが撮られ(手術用らしい。今度はストレッチャーで運んでもらった)、尿管を入れられ、点滴が差し替えられ、王子が売店に買いにいかされたTパンツという紙パンツに履き替えさせられ、手術着に着替えさせられ…。どうでもいいけど、さっきから処置してくれているこの看護士、新米らしく手際が非常に悪い。先輩:「できる?」新米:「やってみます!」医者:「バルーン終わった?」新米:「ごめんなさい、まだです」とか言ってトロイったらありゃしない。尿管はすっとんきょうな場所に入れるし、点滴さすのも下手だし。そりゃー後輩の育成は大事ですよ、でも何もこんなに苦しんでいる私を実験台にしなくても!!「お願いですから早くしてください!!」と涙ながらに訴えても「がんばってください!!」と体をさすってくれる。さする暇があったらはやく処置してくれ〜〜っ。
家族以外の人の前でなりふりかまわず泣き叫んだのは初めて。この痛み、陣痛より絶対に痛い気がする。しかも出産にはゴールがあるし、かわいい赤ちゃんというご褒美までついてくるから頑張れる。でもこの痛みはいったいいつ終わるの??私:「手術は何時ですか?」看護士:「19時です。」私:「今何時ですか?」看護士:「17時半です。」ぬわに〜〜、まだ耐えろというのかっっ??もうかれこれ6時間もこの痛みと戦っているんだぞ。早くなんとかしてくれ〜。大騒ぎしていたら、見かねて先生が18時15分に早めてくれた。騒いでみるもんだ♪救急病棟に移動して、エコノミークラス症候群予防のための圧迫する膝までの靴下をはかされるなど、手術のためにさらにいくつかの処置をしてもらってから手術室に移動。途中、病棟に入れず廊下で待っていたアルバートとウィリアムに遭遇。看護士さんに抱っこされたウィリアムは泣きそうな顔で手をのばしてきたし、アルバートもさすがに神妙な顔をしている。小さいながらも母親の一大事をわかってくれたのか。いやいや、んなわけないか。
手術室に入ると、左腕に血圧測定器、右腕に麻酔の点滴をして、口には酸素マスク。麻酔科医:「miwa385さーん」私:「はい」麻酔科医:「miwa385さーん」私:「…はい…」まだ起きてますよ。こんな調子じゃまだまだ麻酔がかかるのは先ね…なんて思っていたのに、どうやらその直後に落ちたらしく、次に呼ばれたときは口に管が入っていてめちゃくちゃ苦しく、「ぐぉほっ!」と目覚めた。管はすぐに抜かれ、元いた救急病棟に運ばれた。手術を執刀してくれた先ほどの産婦人科医が来てくれて、やはり診断通り、卵巣嚢腫の茎捻転だったが、腫瘍だけ切除して卵巣は残すことができたと説明してくれた。場合によっては腹腔鏡だけでなく、開腹手術に切り替えたり、卵巣を全部取る可能性があることは事前に説明されていたけど、それはどちらもまぬがれたらしい。そして私の左卵巣に巣食っていた6cmの皮様性の腫瘍の中身を見せてくれた。髪の毛と脂肪。うげー気持ち悪い。なぜこんなものがこんなところに…、おそろしや。予定通り木曜日は退院でき、腫瘍が悪性か良性かの検査結果は2週間後に出るとのこと。
医者と入れ替わりで王子が来てくれて、手術の間は私の母とメグ一家がかけつけてくれ、母は王子と一緒に待機してくれ、メグ一家が子供たちを食事に連れ出してくれたと教えてくれた。麻酔は切れているような気がしたけど、疲れなのかちょっとボーッとした頭で入院に必要なもので思いついたものを伝えた後、王子と入れ替わりで母とメグが来てくれた。(救急病棟は家族しか入れず、しかも家族といえど、小学生以下はお断りなのでアルバートとウィリアムは入れない。)医療機器メーカーに勤めるメグは、私に取り付けられたいろいろな機械がすべて自分のところの製品であることに満足して「不謹慎だけど、あんたのおかげでICUに入れた♪」と嬉しそう。それはそれははるばる来てくれたんだから少しは見返りがあってよかったよかった。母も安心した様子で帰っていった。今夜は泊まってくれるらしい。よろしくお願いします…。そして私はそのまま深い深い眠りへと落ちていったのであった。
写真は私が検査で不在にしている間、私のストレッチャーではしゃぐ兄弟。病院について間もなく、早速飽きてきたのかアルバートは「次はどこ行くの?」やら「もう帰ろうよ」やら連発していた。人が苦しんでいるのに何度も言うもんだからぶちきれた私は「もうアルバート!いい加減にして!静かにしていてよ!」と叫んでしまった。そうです、八つ当たりです。心の狭い母親を許してね…